生前整理と断捨離は何が違う?それぞれの目的や違いを解説
2023.02.04
遺品整理
「生前整理って流行っているけど、実際に断捨離とはどう違うの?」そんな疑問を持つ方は多いはず。そこで今回は、遺品整理(生前整理)業界20年以上のプロの目線で生前整理と断捨離の違いを解説します!
生前整理と断捨離の違い、生前整理の目的、生前整理をしない方が良いケースなども併せてご紹介しましょう。この記事を最後まで読むことで、生前整理と断捨離の違いや良さを理解し、自身(や家族)に必要かどうか検討する良い機会になるでしょう。
生前整理の目的
まず、生前整理とは『自分の死後遺された遺族(親族)の負担を軽減する目的でする身辺整理』のことを指します。生前 “整理” だからといって、必ずしもものを捨てなければならないのではなく、何がどこにあるのか引っ張り出して共有するだけでも十分生前整理といえるでしょう。
ちなみに生前整理で扱うのは物だけでなく、財産やデジタルアカウントなども含まれます。
▼生前整理で整理する財産の一例
- 保険証券
- 年金
- 不動産
- 預貯金
- 負債
…など。
これらは全てを細かく共有する必要はありませんが、何がどのくらいあるのか目安となる金額を相続人(*1)に共有しておくことが一般的です。また、負債も相続財産になるので注意が必要です。
負債の存在を知らないまま、あなたの死後に相続人が財産を使ってしまうと、単純承認(負債も相続するとみなすこと)されたとして負債も合わせて相続されてしまいます。
(*1)相続人とは、あなた(生前整理対象者)の死後、財産を相続する人を指します。(妻、夫、子供など)
また、所有しているデジタルアカウントも親族に共有する必要があります。デジタルアカウントは下記のようなものを指します。
▼生前整理で整理するデジタルアカウントの一例
- SNSアカウント(LINE、Twitter、Instagram等)
- メールアカウント
- 定額サービス(サブスクリプション)
- 通販サイトのアカウント
…など。
特に定額サービス(サブスクリプション)系のアカウントは使用している・いないに関わらず、契約している限り請求され続けますので、いざとなったら親族が解約できるようにURLとID、パスワード等をわかるようにして保管しておくと良いでしょう。
生前整理をしないことで想定される死後のトラブルは、主に相続や負債について、遺品の処分はどうするのか等が挙げられます。上記の財産の整理やデジタルアカウントの共有を行っておくことで、遺族の負担を大きく軽減することができるでしょう。
▼生前整理とは?いつやれば良い?生前整理をするメリットとデメリット
断捨離と生前整理の違い
断捨離と生前整理は、そもそもの目的が違います。
断捨離は今の自分にとって無駄(と考えられるもの)なものを処分し、整理することで、自分が前向きに活き活きと生活するための整理を指すのに対し、生前整理は遺された親族の負担を軽減するために行うものです。そのため、生前整理に関しては必ず『捨てる』という作業が発生するわけではありません。
このように、断捨離と生前整理では、整理に対するモチベーションや向き合い方も大きく変わってきますね。
生前整理は家族で行う最後の共同作業
生前整理は自分の死後関係するであろう親族全員と共同で行うことでより効果を発揮します。言い換えてみれば、家族で行う最後の共同作業といえるでしょう。
身の回りのものを家族と一緒に整理することで思い出の振り返りになったり、家族の絆を深める良い機会になるはずです。特にご実家にお住まいの方の場合は、家族で生前整理をすることで、良くも悪くも家族全員の半生を振り返るきっかけになります。
先程お伝えした通り、特に何かを捨てたりしなくても問題ありません。ものを引っ張り出して家族で確認するだけでも生前整理として大きな意味を持つでしょう。
生前整理を通して発見した課題の解決
生前整理で身の回りのものや財産(負債)の棚卸しを行うことで、遺言や相続についての取り決めを行う機会にもなります。これまで長い時間目を背けてきた課題の解決を図る良い機会になるので、親族間の課題の洗い出し・解決のきっかけとして利用すると良いでしょう。
もしトラブルに発展しそうな場合は、司法書士など専門家に間に入ってもらうことで、スムーズに相続などの取り決めを行うことができます。
生前整理はゴール地点やルールを定めることが大切
生前整理をする際は、期間やゴール地点(目的)、ルールを定めてから行うことが大切です。『保有している財産を整理し、絶対に捨ててはならないものを明確にする』などの目標を設定することで生前整理を進めやすくなります。
期間などを設定しないまま生前整理をスタートすると、いつまで経っても整理が終わらなかったり、整理するどころか結果的にただ散らかってしまっただけ…ということもあり得ます。
また、生前整理を行う際にルールを定めないことで、親族が意図せず生前整理対象者の個人情報を暴くようなことをしてしまい、親族と生前整理対象者の関係性に亀裂が入ることも。
- 触れて良いもの、ダメなもの(触れてダメなものは避けておく)
- 期間(いつまでに終わらせるか)
- 最終的な目的(相続財産の確認?ものの所在の確認?)
上記の3つのポイントを考慮しながら整理を進めることで、生前整理対象者にも親族にもストレスになりにくい、良い生前整理ができるでしょう。
場合によってはトラブルに発展するケースも
生前整理をすることで得られるメリットは多いですが、その反面、遺産相続や負債などの問題が浮き彫りになることで親族の間でトラブルに発展することがあります。
また、まだ生前整理対象者が存命にも関わらずむやみに「ものを減らせ」と言われることで、戸惑ってしまうこともあるでしょう。
家族といえど、生前整理対象者のことを一個人として尊重するとともに、ゴール地点やルールを定めてテキパキ終わらせるのが円満な生前整理の鍵です。お互いに思いやりを持って生前整理を行うのが大切なのです。
生前整理をしない方が良いケースとは
親族同士の関係性によっては、実は生前整理をしない方が良いケースもあります。生前整理をしない方が良いケースとは、主に下記の3つ。
- 家族・親族同士で仲が悪い
- 財産(負債)がほとんどない
- ゴミを溜める心配がない(荷物が少ない)
家族・親族同士で仲が悪い場合は、円満な生前整理はほぼ不可能です。関係性が悪い人に身の回りの持ち物を触られるのも生前整理対象者にとって大きなストレスになるでしょうから、特に生前整理をしないことをおすすめします。
また、財産(あるいは負債)がほとんどない場合も、生前整理をあえてする必要性は少ないです。「私の死後は全て家のものを処分して」等、荷物の整理方針についてはっきりしている場合なども、特別生前整理をしなくても遺族の負担は変わらないでしょう。
最後に、ゴミを溜める心配がない(荷物が少ない)方も、上記と同様の理由で特別生前整理をする必要性は少なくなります。
【まとめ】
生前整理と断捨離は『誰のために行うものか』で変わる違いがあります。生前整理は自分の死後に遺族の負担を軽減する目的で行うのに対し、断捨離は現在の自分に不要なものを整理することで活き活きと過ごす目的があります。
また、生前整理をすることでこれまで目を背けてきた課題の洗い出し・解決につながることもあります。目的やルール、期間を定めて生前整理を行うことが、親族間の課題解決の良いきっかけになることでしょう。
このように生前整理はうまく利用すれば家族の最後の共同作業として良い時間になりますが、親族との関係性によってはトラブルに発展したり、生前整理対象者が嫌な思いをすることになるケースも。
生前整理対象者と親族間で目的を明確にした上で、お互いが合意のもと生前整理を行うことが大切です。今回の記事が、生前整理について考えるきっかけの一助となれば幸いです。